Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Geopolymer」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。
Performance optimization and carbon reduction potential of bamboo biochar fine aggregates for sustainable geopolymer mortars
今日の建設業界は、従来のセメント製造に伴う大量の温室効果ガス排出という環境課題に直面しており、持続可能な材料への転換が喫緊の課題となっています。このような背景から、産業副産物を原料とし、製造過程での二酸化炭素排出量を大幅に削減できる地ポリマーモルタルが、次世代の建築材料として注目を集めています。さらに、再生可能なバイオマス資源である竹を炭化して得られる竹バイオチャーは、多孔質で軽量という特性を持つため、細骨材としての応用が期待されています。しかし、その利用にはモルタルの作業性や強度への悪影響といった課題が伴い、実用化に向けた性能最適化が求められていました。
来たる2025年10月に発表される本研究は、この竹バイオチャーを地ポリマーモルタルの細骨材として活用する可能性を探り、その作業性、機械的強度、乾燥収縮、細孔構造、さらには炭素排出量への複合的な影響を詳細に評価しました。研究チームは、竹バイオチャーを海砂の5%、10%、15%の割合で代替配合し、特に未処理のバイオチャーがモルタルの流動性や圧縮強度を低下させ、乾燥収縮を増大させるという課題に着目。この問題を克服するため、湿潤調整とフライアッシュコーティングを組み合わせた独自の画期的な前処理方法を開発しました。この処理により、バイオチャー粒子の界面接着と分散性が飛躍的に向上し、モルタルの流動性が最大25%改善されるといった顕著な効果が確認されました。また、細孔構造の緻密化や、バイオチャーの空隙にゲル生成物が充填される現象も観察され、材料全体の品質向上に寄与することが示されました。
詳細なライフサイクルアセスメント(LCA)の結果、竹バイオチャーを海砂の5%代替した配合(MBC-5%)が、性能と環境負荷削減の両面で最もバランスの取れた選択肢であることが明らかになりました。この配合は、地球温暖化ポテンシャルを約28%削減できることを実証し、累積エネルギー需要の増加も8%未満に抑えられることが示されました。10%代替配合では圧縮強度が対照配合より約16%低いという結果も出ていますが、前処理による性能改善効果は大きく、さらなる最適化の余地があることが示唆されています。
本研究は、シンプルな材料最適化手法を用いることで、これまで課題の多かった竹バイオチャーを地ポリマーモルタルシステムへ効果的に組み込めることを実証しました。この成果は、建設廃棄物の削減、再生可能資源の活用、そしてセメント製造に起因する二酸化炭素排出量の大幅な削減に繋がり、持続可能で低炭素な建設への道を大きく拓くものとして、その意義は極めて大きいと言えます。将来的には、竹バイオチャーを応用した地ポリマーモルタルが、次世代の環境配慮型建築材料として広く普及することが期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)
Unlocking the multi-mechanical properties of high-strength high-ductility engineered geopolymer composites incorporating waste glass powder as precursor
今日の建設業界では、環境負荷の低減と資源の有効活用が喫緊の課題となっています。特に、セメント製造に伴う大量の二酸化炭素排出や、増加する産業廃棄物の処理は深刻な問題であり、これらを解決する持続可能な材料の開発が強く求められています。その中で、セメントの代替材料として注目されているのが、ジオポリマー複合材(EGC)です。EGCは、産業廃棄物などを原料とする低炭素な結合材であり、高い耐久性を持ちますが、その性能と環境配慮を両立させる技術には、さらなる研究の余地がありました。また、廃ガラスは世界的に年間数億トン発生しており、その多くが埋め立て処分される現状にあり、高価値な再利用方法の確立が期待されています。
本研究は、この課題に対し、未利用の廃ガラス粉(WGP)をEGCの新たな前駆体として活用することで、高強度かつ高延性を併せ持つエンジニアードジオポリマー複合材(WGP-EGC)を開発しました。廃ガラス粉は不規則な粒子形状を持ち、豊富な非晶質成分を含むことから、ジオポリマー化反応性とフィラー効果の両方を発揮することが確認されました。研究チームは、WGPを従来のジオポリマー原料である粉砕粒状高炉スラグ(GGBS)とフライアッシュ(FA)に部分的に置き換えることで、WGP-EGCの機械的特性を詳細に調査しました。その結果、WGPがGGBSとFAを同時に適切な割合で置換した場合、緻密な微細構造が形成され、参照EGCと同等かそれ以上の機械的強度を実現できることが明らかになりました。特に、フライアッシュの一部をWGPで置換することが、EGCの引張性能に顕著な改善をもたらすことが判明しました。さらに、GGBSとFAの両方を適切な比率でWGPに置換したWGP-EGCは、参照EGCと比較して優れた一軸引張性能を発揮し、ケイ酸塩弾性率とアルカリ量を最適化することで、引張応力とひずみ容量をさらに向上させることができました。具体的には、弾性率1.3、アルカリ量9.0%の条件で製造されたWGP-EGCが最高の引張性能を示し、引張応力12.9 MPa、引張ひずみ8.5%という極めて高い値を達成しました。これは、従来のジオポリマー複合材では達成が困難であった高強度と高延性の両立を示す画期的な成果です。
この研究で開発された高強度・高延性WGP-EGCは、廃ガラスという廃棄物を高付加価値な建設材料へと転換する道を開くものです。これにより、ガラス廃棄物の環境負荷を低減しつつ、資源の循環利用を促進し、持続可能な社会の実現に大きく貢献します。また、優れた機械的特性を持つWGP-EGCは、将来的には橋梁、高層建築物、インフラ構造物など、高い強度と柔軟性が求められる多様な分野での応用が期待されます。本研究は、低炭素で高性能な建設材料の開発を加速させ、環境と経済の両面にわたる持続可能性を追求する上で重要な一歩となるでしょう。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)
Effects of oxide compositions of vitreous phases in precursors on the chloride binding of geopolymer
持続可能な社会基盤の構築において、従来のポルトランドセメントに代わる低炭素型材料として、ジオポリマーコンクリートへの期待が高まっています。しかし、その実用化には、鉄筋コンクリートの劣化主因となる塩化物イオンに対する耐性、すなわち耐塩化物性能の安定性確保が大きな課題とされてきました。この性能の変動は、ジオポリマーの原材料である前駆体の化学組成の多様性に起因すると考えられており、特に前駆体中に含まれるガラス相の化学組成がその性能を左右する鍵であると指摘されてきました。高性能で耐久性に優れたジオポリマーの開発には、このガラス相組成と塩化物結合メカニズムの定量的かつ詳細な理解が不可欠です。
このような背景のもと、2025年10月に国際学術誌「Cement and Concrete Composites」に掲載される本研究は、ジオポリマーの前駆体中の有効成分ガラス相におけるCa/Si、Al/Si、Na/Siといった主要な酸化物組成比が、ジオポリマーの塩化物結合容量に与える影響とその相互関係を、体系的に解明した点に新規性があります。研究チームは、単純中心設計法に基づき、多角的な特性評価技術を駆使してこれらの酸化物組成比を制御し、ジオポリマーの塩化物結合性能を評価しました。その結果、Ca/Si、Al/Si、Na/Siの各比率が増加するにつれて、ジオポリマーの塩化物結合容量は、ある特定の比率までは増加するものの、それを超えると逆に減少に転じるという非線形な挙動を示すことが明らかになりました。さらに、塩化物濃度が0.8 mol/Lを超えると結合量の増加が鈍化する現象も観察され、これは液相中の可溶性カルシウムが不足し、塩化物結合を担う主要な化合物であるフリーデル塩の形成が制限されるためであると結論付けています。
特に注目すべきは、塩化物と酸化物組成間の定量的な関係性の解明です。本研究は、Na/Si比率がジオポリマーの塩化物結合において最も顕著かつ支配的な影響を及ぼすことを示しました。これは、ジオポリマーの塩化物抵抗性能を最適化する上で、Na/Si比率の精密な制御が極めて重要であることを意味します。一方、Al/Si比率は、塩化物結合に関連する様々な相の形成と安定性を調節する役割を担い、Ca/Si比率は、枯渇するまでの間、フリーデル塩形成に必要な利用可能なカルシウムの安定した供給源として機能することが示されました。これらの知見は、各酸化物組成が塩化物結合メカニズムの中で独自の役割を果たしていることを明確にしています。
本研究で得られたこれらの定量的かつ詳細な知見は、ジオポリマーの耐塩化物性能をより正確に予測し、設計するための極めて重要な情報を提供するものです。特に、各酸化物組成比が塩化物結合に与える影響と、その最適範囲を特定できたことは、高性能かつ耐久性に優れたジオポリマー材料の開発を大きく前進させます。これにより、環境負荷の低い次世代型コンクリート材料の応用範囲を広げ、持続可能な社会インフラの構築に向けた実用化を加速させる上で、重要な指針となることが期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)