AIニュース|2025-11-13 Cement の新着まとめ

Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Cement」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。


A novel deep learning method for automated microcrack segmentation in cement-based materials

コンクリートをはじめとするセメント系材料は、現代社会を支える基盤素材ですが、その内部に発生する微細なひび割れ、すなわちマイクロクラックは、材料の機械的強度や耐久性を著しく低下させる深刻な問題です。これらのマイクロクラックを正確に検出し、その挙動を理解することは、より高性能で長寿命なセメント系材料の開発において極めて重要とされています。これまで、走査型電子顕微鏡(SEM)画像を用いてマイクロクラックを可視化する手法が主流でしたが、その解析は多くの場合半自動であり、特定のデータベースや実験条件に限定されるため、多様な環境下での網羅的な分析には限界がありました。このため、材料の劣化メカニズムを深く理解し、設計段階で材料特性を最適化するための、より自動的かつ高精度なマイクロクラック検出技術の開発が求められていました。

このような背景のもと、本研究はセメント系材料中のマイクロクラックを自動かつ高精度にセグメンテーション(画像中の特定の領域を識別・分離)する新たな深層学習手法を提案しました。まず、様々な形態的特徴を持つマイクロクラックを含むSEM画像を網羅的に収集し、独自の高品質なデータセットを構築しました。このデータセットを基盤として、本研究は「高品質特徴抽出・融合ネットワーク(QF-Net)」と名付けられた深層学習モデルを開発しました。QF-Netは、セグメンテーション精度を飛躍的に向上させるための二つの革新的なカスタムコンポーネントを組み込んでいます。一つは、画像からマイクロクラックの微細な特徴を効率的かつ正確に抽出・融合する「CNN-Trans-Fusionブロック」です。もう一つは、画像解像度を効果的に下げながらも重要な情報を保持する「Haarウェーブレットとマックスプーリングを組み合わせたハイブリッドダウンサンプラー(HWMD)」です。これらの独自モジュールと結合損失関数を用いた綿密な学習プロセスを通じて、QF-Netは複雑なマイクロクラックパターンを極めて高い精度で識別・分離する能力を獲得しました。

実験結果は、QF-Netモデルが従来の様々なセグメンテーション手法や、最新の深層学習ネットワークと比較して優れた性能を発揮することを明確に示しました。さらに、本研究で構築したデータセットに限定されず、既存の公開された研究で用いられた画像に対しても高い汎化能力を持つことが確認され、その実用性の高さが裏付けられました。また、アブレーション研究(一部のモジュールを取り除いて性能変化を評価する手法)により、QF-Netに導入された各モジュールが全体のセグメンテーション性能向上に不可欠な貢献をしていることも実証されました。本研究が提供するこの自動的で高精度なマイクロクラックセグメンテーション手法は、セメント系材料におけるマイクロクラックの形成メカニズムをこれまで以上に深く理解するための強力なツールとなります。これは、将来的に、材料の設計段階における特性最適化を可能にし、より堅牢で持続可能なインフラ構築に貢献する大きな一歩となるでしょう。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)


Enhancing interlayer bonding in 3-dimensional printed concrete using bacteria-based biomineralization

近年、建設業界において3Dプリントコンクリート(3DPC)は、施工の効率化や複雑な構造物の実現を可能にする革新的な技術として期待が寄せられています。しかし、積層造形される3DPCには、層と層の間に生じる接合部の弱さが課題として存在し、構造全体の強度や耐久性を低下させる要因となっていました。この課題を克服するため、微生物の働きを利用して炭酸カルシウムを生成させ、コンクリートの細孔を埋めたり、結合材として機能させたりする微生物誘発炭酸カルシウム沈殿(MICCP)技術が注目されています。従来のMICCP研究は主に実験室レベルでの有効性を示していましたが、実際の建設現場で容易に利用できる実用的なソリューションの開発が求められていました。

このような背景のもと、本研究では、産業用途を想定して特別に設計された「すぐに使えるフライアッシュベースの細菌接種剤」に着目し、その3DPCの層間接着力向上における現場適用性を検証しました。この新たなアプローチは、建設廃棄物であるフライアッシュを有効活用しながら、環境負荷の低減にも貢献することを目指しています。研究では、プリンティングおよび養生プロセス中に栄養ブロスを添加した検体と、栄養ブロスを豊富に含む水で養生した検体について、広範な試験を実施しました。その結果、細菌接種剤と栄養ブロスを用いた処理は、3DPCの機械的性能を劇的に向上させることが明らかになりました。具体的には、割裂引張強度と直接引張強度が、未処理の検体と比較してシリーズIで422.21%、シリーズIIで509.25%もの大幅な増加を示しました。走査型電子顕微鏡(SEM)による微細構造分析では、処理された検体で3~7マイクロメートルの層状菱面体カルサイト結晶が形成されていることが確認され、X線回折(XRD)分析や熱重量分析(TGA)でもカルサイト含有量の増加が裏付けられました。さらに、水銀圧入法(MIP)による分析では、処理された検体において気孔率が減少し、より緻密な細孔構造が形成されていることが判明し、細菌によるバイオミネラリゼーションがコンクリートの構造を内側から強化するメカニズムを明確に示しました。

これらの画期的な研究成果は、現場で容易に展開可能な細菌溶液を用いたMICCP技術が、3Dプリントコンクリートの構造的弱点である層間接着力の課題を効果的に解決し、その機械的強度を大幅に向上させることを実証するものです。本研究は、持続可能な建設技術としての3Dコンクリートプリンティングの可能性を大きく広げ、将来的な大規模応用への道を開く画期的な一歩と言えるでしょう。特に、廃棄物であるフライアッシュの利用と環境負荷の低減という点で、環境配慮型建設への貢献も期待されます。今後は、さらなる現場展開に向けた最適化や、多様な環境条件下での細菌株の適応性に関する研究が、この技術の実用化を加速させる鍵となるでしょう。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)


Multiscale pore optimization of UHPC with microcapsules: From nanoscale to macroscale shrinkage regulation

超高性能コンクリート(UHPC)は、その卓越した強度と耐久性から、現代のインフラ建設に不可欠な材料です。しかし、UHPCは硬化過程で自己収縮を起こしやすく、これに伴うひび割れ発生が長期的な性能を損なう可能性があります。これまで、この自己収縮を抑制するために超吸水性ポリマー(SAP)を用いた内部養生(IC)が広く用いられてきましたが、SAPがコンクリート内部に残す粗大な空隙(マクロポア)が、UHPC本来の機械的強度を低下させるという問題が指摘されていました。このため、収縮低減と強度維持を両立させる技術の開発は、UHPCのさらなる普及と発展に不可欠な課題でした。

このような背景のもと、最新の研究では、UHPCの自己収縮を大幅に抑制しつつ、機械的強度を維持・向上させる画期的な手法が開発されました。本研究チームは、アルカリ感受性シェルを持つ二重エマルションマイクロカプセルを開発し、これをUHPCに配合することで、この課題解決のアプローチを提案しました。このマイクロカプセルは、コンクリートの硬化過程で内部の水を効率的に放出し、緻密な水和構造を形成することで自己収縮を効果的に低減するように設計されています。実験では、マイクロカプセルの配合が水和反応、機械的特性、収縮挙動、さらにはマイクロ・ナノスケールでの内部構造に与える影響が詳細に分析されました。その結果、マイクロカプセルを最適量(1.0%)で添加した場合、マイクロカプセルを含まないUHPCと比較して自己収縮率が49.5%も劇的に減少しました。特筆すべきは、この顕著な収縮低減効果にもかかわらず、圧縮強度は全く損なわれなかった点です。ナノインデンテーションやX線マイクロCTを用いた高度な分析により、マイクロカプセルが界面遷移帯(ITZ)の品質を改善し、内部の微細なひび割れ発生を抑制することで、内部養生プロセスが大幅に強化されていることが実証されました。研究チームはさらに、UHPC内部のひび割れの断片化度を定量的に評価する独自の分析手法も提案し、マイクロカプセルの内部養生効率への影響を体系的に特徴付けました。

今回の研究で開発されたマイクロカプセル技術は、UHPCの性能を多角的に最適化し、低収縮と高強度を両立させる新たな道を開くものです。この成果は、従来の内部養生材が抱えていた「収縮抑制と強度低下」というトレードオフの関係を解消し、より高性能なUHPCの実現に向けた理論的な基盤を提供します。将来的には、このマイクロカプセル技術が、より耐久性に優れ、長寿命なコンクリート構造物の建設に貢献し、次世代のインフラ整備において極めて重要な役割を果たすことが期待されます。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)