Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Geopolymer」に関連する新着論文 1 本の要点をまとめました。
Unveiling thermoelectricity of metakaolin-based geopolymer for sustainable energy harvesting
この度、低コストかつ持続可能な次世代エネルギー変換材料として注目されるジオポリマーに関する画期的な研究が明らかにされました。持続可能な社会の実現に向けて、未利用熱エネルギーを効率的に電力へ変換する熱電変換技術の重要性が高まっています。従来の熱電材料は、高コストであったり、レアメタルを用いるため環境負荷が高かったりといった課題を抱えており、安価で環境に優しい新規材料の開発が求められています。近年、廃棄物由来の粘土鉱物などを原料とするジオポリマーが、その優れた物理的特性と環境適合性から有望視されていますが、ジオポリマーにおけるイオン熱電性、すなわちイオンの動きによって生じる熱電現象の根本的なメカニズムは、これまで十分に解明されていませんでした。本研究は、この未解明なメカニズムに焦点を当て、メタカオリン系ジオポリマー(MK-GP)の高い熱電性能の起源を、イオン的寄与と電子的寄与の両面から詳細に探求することを目的としています。
研究チームは、メタカオリン系ジオポリマーの熱電性を多角的に分析しました。まず、養生期間7〜14日の未加熱MK-GPが、約1700 μV K⁻¹という非常に高いP型ゼーベック係数を示すことを発見しました。この熱電性能が水分に強く依存することも判明し、3日間の乾燥で係数が31%減少し、7日間では68%も低下しました。これは、熱重量分析(TGA)で確認された自由水の損失や、水銀圧入法(MIP)で示された細孔サイズの拡大が、イオンの移動度を低下させたためと考えられます。一方で、乾燥後に水を供給する再水和を行うと、係数は3日乾燥材で37%、7日乾燥材で157%と大幅に回復し、水分が熱電性に極めて重要な役割を果たすことを裏付けました。さらに、ジオポリマーから抽出された細孔溶液(pH約12.5)自体が約7750 μV K⁻¹という驚異的なP型ゼーベック係数を示すことから、陽イオンの輸送が熱電性を主導していることが示唆されました。バンドギャップ測定やホール効果分析により、ジオポリマーのマトリックス自体は電子キャリアを持つ絶縁体であることが分かっていますが、全体的な熱電応答はイオンによって支配されており、これによりメタカオリン系ジオポリマーがP型イオン熱電体として機能することが明らかにされました。
これらの画期的な発見は、メタカオリン系ジオポリマーが、持続可能で低コストなエネルギー変換を実現する上で極めて有望なイオン熱電材料であることを明確に示しています。実際に、開発されたジオポリマーは2.3 Vのゼーベック電圧を生成することに成功し、これは直径3mmのLEDを点灯させるのに十分な電力です。この実証は、未利用の排熱などを電気エネルギーに変換する用途において、安価で環境負荷の低い材料の実用化に大きく貢献する可能性を秘めています。今回の研究は、ジオポリマーのイオン熱電性メカニズムを深く理解する上で重要な知見を提供するだけでなく、セメント産業におけるCO2排出量削減や、熱電変換デバイスのコスト低減にも繋がり、持続可能な社会の実現に向けた技術革新を加速させるものとして、その今後の応用展開が大いに期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)