Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Cement」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。
Polyethylene oxide-magnesium phosphate cement composite as a high-performance solid-state electrolyte
エネルギー貯蔵技術の発展は、持続可能な社会実現に向けた重要な課題であり、次世代バッテリーやスーパーキャパシタの性能を左右する高性能かつ安全な固体電解質の開発が世界中で喫緊の課題となっている。従来の液体電解質が抱える液漏れや引火性といった安全性に関する懸念、そして電極界面の安定性といった問題を克服するため、固体電解質への移行が強く模索されている。特に、構造部材としても機能しながらエネルギーを貯蔵する「構造用スーパーキャパシタ」のような革新的なデバイスにおいては、電解質自体に十分な機械的強度が求められ、高イオン伝導性とその優れた機械的特性を両立させることは、これまでの材料開発における大きな技術的挑戦であった。この背景のもと、両特性を兼ね備える新たな固体電解質材料の開発が強く望まれていた。
この度、国際学術誌『Cement and Concrete Composites』に掲載予定の最新の研究において、ポリエチレンオキシド(PEO)とリン酸マグネシウムセメント(MPC)を組み合わせた新たな複合材料が、高性能固体電解質として極めて高い可能性を秘めていることが明らかになった。本研究では、柔軟なポリマーであるPEOをセメント系材料であるMPCに組み込むことで、このPEO-MPC複合システムを構造用スーパーキャパシタ向けの固体電解質として活用する手法とその実現可能性について、多角的な分析が行われた。研究チームは、この複合材料の物理的、機械的、電気化学的特性、さらには水和メカニズムに至るまでを詳細に解析し、エネルギー貯蔵用途への適合性を厳密に評価。その結果、開発されたPEO-MPC複合材料は、従来の材料と比較して「非常に高いイオン伝導性」を示すだけでなく、「顕著な質量比容量」という優れたエネルギー貯蔵能、そして「満足のいく機械的特性」をも同時に達成していることが確認された。特筆すべきは、本研究でPEO-MPC複合固体電解質システムが初めて開発され、MPC複合材料において、イオン伝導性と圧縮強度の両方を同時に向上させるという画期的な進歩が達成された点である。
これらの画期的な発見は、PEO-MPC複合材料が次世代のエネルギー貯蔵デバイス、特に構造用スーパーキャパシタの電解質材料として非常に有望であることを明確に示唆している。高イオン伝導性と優れた機械的強度を兼ね備えることで、この材料は、デバイスの安全性と耐久性を飛躍的に向上させるだけでなく、構造体そのものがエネルギーを貯蔵するという、全く新しいコンセプトの実現に貢献する。本研究で確立されたPEO-MPC複合技術は、固体電解質技術におけるブレークスルーとなり、より安全で高効率なエネルギー貯蔵システムの開発を加速させ、持続可能なエネルギー社会への移行を力強く推進するものと期待される。今後、この複合材料の実用化に向けたさらなる研究開発が期待される。
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Anomalous time-constant on mortar/electrolyte interface and its influence on LPR and EIS measurement of rebar corrosion
鉄筋コンクリート構造物の健全性を維持する上で、内部の鉄筋が腐食しているかどうかを正確に診断することは極めて重要です。この評価には、電気化学インピーダンス分光法(EIS)やリニア分極抵抗法(LPR)といった電気化学的手法が広く用いられています。しかし、これらの手法は電極の配置方法によって測定結果にばらつきが生じやすく、これが信頼性の高い腐食診断を妨げる一因となっていました。この結果の不整合は、構造物の適切な維持管理や将来的な寿命予測を困難にするという長年の課題を提示していました。
この課題に対し、最新の研究がその根本原因の一つを特定し、その影響を明らかにしました。本研究では、同じ鋼材/モルタル試料に対して様々な参照電極(RE)と対電極(CE)の配置を適用し、EISとLPR測定を実施。その結果、特にCEとREが共に外部電解質中に配置されたEIS測定条件において、モルタル/電解質(M/E)界面に30~220 Hzの周波数範囲で「ゴースト時定数(GTC)」という、これまで見過ごされてきた現象が存在することを発見しました。過去には、このGTCが鉄酸化物層の特性と誤解されることが多かったのですが、本研究は、数ナノメートルから数マイクロメートルという厚さを持つこのM/E界面が、腐食過程を正確に記述する等価電気回路モデル(EECM)を構築する上で不可欠な物理的実体であることを明確に示しました。
このM/E界面に起因するゴースト時定数の存在と、それが等価回路モデルにおいて持つ重要性は、従来の鉄筋腐食評価手法に大きな再考を促します。もしこのM/E界面による干渉が無視された場合、EISによって算出される不動態皮膜の厚さは9倍以上も過大評価される可能性があり、さらに腐食の進行度合いを示す重要な指標である腐食電流密度(i_corr)の算出においても、最大75%という甚大な誤差を招く危険性があることが具体的に示されました。これらの知見は、従来のEISおよびLPR測定結果の解釈に根本的な変革をもたらし、より正確な鉄筋腐食の診断と将来予測の精度向上に直結します。結果として、コンクリート構造物のより的確な維持管理計画の立案、ひいては社会インフラの安全性と長寿命化に大きく貢献するものと期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)
Fractal modeling on the effective thermal conductivity of aerogels incorporated cementitious composites (AICC) incorporating the ITZ effects
近年、優れた断熱性能を持つエアロゲルは、建築分野における省エネルギー材料として大きな注目を集めています。しかし、その低い機械的強度が実用化への課題となっていました。この課題を克服し、優れた断熱性と十分な機械的性能を両立させる潜在的な解決策として、エアロゲルをセメント系複合材料に組み込んだ「エアロゲル含有セメント系複合材料(AICC)」の研究開発が進められています。AICCの熱伝導率を正確に予測することは、その性能評価や設計最適化において極めて重要であり、実用化に向けた不可欠なステップとされています。
このような背景のもと、本研究はAICCの有効熱伝導率を予測するための革新的なモデルを提案した点で画期的です。特に注目すべきは、材料界面に形成される微細構造である「界面遷移帯(ITZ)」の効果をモデルに組み込んだ点です。ITZは、複合材料において異なる材料が接合する際に生じ、材料全体の特性に大きく影響を与えることが知られていますが、従来のAICCの熱伝導率予測モデルではその影響が十分に考慮されていませんでした。研究チームは、フラクタル幾何学に基づく三相Sierpinskiカーペットモデルを基盤とし、このITZ効果を明示的に考慮することで、より高精度な予測を可能にしました。このモデルは、エアロゲルを組み込んだ超高性能コンクリート、モルタル、ペーストといった様々なセメント系材料の実験データを用いて検証され、その妥当性が確認されています。
詳細なパラメトリック解析の結果、モデルの精度を向上させるための重要な知見が複数得られました。具体的には、エアロゲル含有量が低い場合には計算における定数Cの選択が、高い場合(50体積%以上)には定数nの選択が、より正確な熱伝導率予測をもたらすことが示されました。また、ITZの熱伝導率は、マトリックスとエアロゲルの熱伝導率の差に大きく影響される一方、エアロゲルの粒子サイズの影響は相対的に小さいことも明らかになりました。さらに、エアロゲル添加がAICCのフラクタル次元に与える影響は、エアロゲル含有量が40体積%を超えると顕著になることが確認されています。最も重要な成果として、ITZの影響を明示的に考慮したこの強化された三相カーペットモデルは、AICCの熱伝導率予測において10%以下の誤差を達成しました。これは、複合材料の熱特性を決定する上で界面効果が極めて重要な役割を果たすことを明確に示唆しており、高性能なAICCの設計や最適化に大きく貢献し、持続可能な建築材料の開発を加速させるものと期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)