Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Cement」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。
Multiscale investigation of sustainable spalling-resistant ultra-high performance concrete containing sludge-derived slag derivatives and recycled polypropylene fibre
超高性能コンクリート(UHPC)は、その高い強度と耐久性から次世代建材として注目を集めていますが、火災時の高温に曝されると内部の水蒸気圧によって爆裂剥離(スポーリング)を起こしやすく、建築物の安全性に懸念があります。また、持続可能な社会の実現に向け、建設分野では天然資源の消費を減らし、下水汚泥スラグや再生プラスチックといった産業廃棄物を有効活用する技術が求められています。本研究は、こうした背景のもと、下水汚泥由来のスラグ誘導体や再生ポリプロピレン(PP)繊維といった廃棄物由来材料をUHPCに導入することで、耐火性能を向上させ、環境負荷を低減する持続可能なUHPCの開発を目指しました。
本研究では、下水汚泥から生成される微粉砕GSDSをセメント代替材、SDSを細骨材代替材、さらに再生PP繊維を混和したUHPCの高温性能を多尺度的に検証しました。その結果、GSDSの添加はセメントの水和を促進し、水和物であるC-S-Hの構造を強化することで、高温誘発脱水に対する耐性を向上させ、600℃までの強度保持を改善しました。これは水銀圧入ポロシメトリーで確認された、高温下での緻密な微細構造にも裏付けられます。一方、爆裂剥離試験では、SDS骨材が周囲の界面にマイクロクラックを誘発し、再生PP繊維が溶融して、骨材周囲に蒸気放出経路となるマイクロクラックと空隙を形成することが判明しました。これらの経路がコンクリート内部の透過性を高め、水蒸気圧を効果的に解放することで爆裂剥離を抑制します。特に、12 kg/m3の再生PP繊維を配合したUHPCは、対照UHPCが100%の質量損失を伴う爆裂剥離を起こしたのに対し、爆裂剥離を完全に防止し、質量損失をわずか12.2%にまで低減する画期的な成果を達成しました。この結果は、GSDS、SDS、そして再生PP繊維の組み合わせが、持続可能で優れた耐火性能を持つUHPCの開発に極めて有効であることを示しています。
この研究は、廃棄物由来材料を高性能建築材料に応用する可能性を大きく広げ、建設産業における資源循環と環境負荷低減に大きく貢献するものです。下水汚泥由来スラグ誘導体や再生PP繊維の活用は、天然資源の消費を抑えつつ、UHPCの耐火性という喫緊の課題を解決する道筋を示しました。これにより、火災時の建築物の安全性が向上するだけでなく、より持続可能な建築環境の構築に向けた具体的な技術的基盤が提供されます。本成果は、将来的な高性能かつ環境配慮型のコンクリート材料開発を加速させ、持続可能な社会の実現に貢献する画期的な一歩となるでしょう。
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Multi-scale characterization of the 3D printed concrete strength considering the full grade pore structure
建設分野に革新をもたらす技術として注目される3Dプリントコンクリート(3DPC)は、その自由な造形性から大きな期待が寄せられています。しかし、積層造形という特性上、フィラメント間や層間に発生する多孔質なインターフェースが材料のマクロな力学特性に複雑な影響を与え、強度発現メカニズムの包括的な理解が課題となっていました。従来の強度評価においては、この積層構造に起因する多様なスケール(マイクロ、メソ、マクロ)の細孔構造が十分に考慮されておらず、高精度な強度予測や品質管理を実現するための詳細な分析手法が求められていました。
このような背景のもと、本研究は3DPCの強度に影響を及ぼす全スケールの細孔構造を、空間分布の観点から詳細に特性評価した点に大きな新規性があります。研究チームは、プリント過程で導入される「導入細孔」と、セメントの水和反応で生じる「水和細孔」が相互に影響し合い、水和細孔の分布密度や幾何学的特性を変化させることを明らかにしました。さらに、硬化後の細孔構造を能動的に制御するアプローチとして微生物修復法を導入し、これによりゲル細孔、毛管細孔、プリント空隙といった異なる種類の細孔の空間分布を調整できることを実証しました。これらの詳細な分析の結果、3DPCの異方性圧縮強度が、20ナノメートルから3ミリメートルという広範なサイズの細孔の分布と数に密接に関連していることを突き止めました。この知見に基づき、Powers理論を応用して積層されたインターフェースにおける細孔の空間分布が強度に与える影響をシミュレートする新たな3DPC用細孔-強度モデルを開発。加えて、細孔の形状と空間分布を考慮した上で、異なる3つの配合比における3DPCの構成応力-ひずみ関係を確立し、その力学挙動を詳細に評価することに成功しています。
本研究で得られた包括的な成果は、3DPCの強度発現メカニズムに対する理解を飛躍的に深めるものです。開発された細孔-強度モデルと応力-ひずみ関係の評価は、3DPC構造物の設計において、積層構造に起因する異方性を考慮したより高精度な強度予測を可能にし、設計の信頼性を向上させます。また、微生物修復法による細孔構造の能動的な制御の可能性は、将来的に3DPCの材料特性を最適化し、より均質で高い強度を持つ構造物を実現するための新たな道筋を開くものです。これらの知見は、3DPCの品質管理の向上、構造物の信頼性向上に貢献するだけでなく、持続可能な建設材料としての3DPCの普及と発展を大きく加速させることが期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)
Assessment of thermal cracking and damage in concrete by ultrasonic velocity and Vp/Vs ratio
コンクリートは、火災や高温環境に晒されると内部構造に変化が生じ、強度や耐久性が低下することが知られています。このような熱による損傷は、橋梁やトンネル、原子力発電所などの重要インフラの安全性に直結するため、非破壊で正確に評価する技術の開発が強く求められています。特に、目に見えない内部のひび割れや微細構造の変化を検出することが重要となります。これまで、超音波を用いた非破壊検査はコンクリートの状態評価に活用されてきましたが、高温履歴を受けたコンクリートの複雑な構造変化、特に水分飽和状態における挙動については、まだ十分に解明されていませんでした。
このような背景のもと、最新の研究では、高温加熱後のコンクリートにおける超音波の伝播速度(Vp)およびVp/Vs比(縦波速度と横波速度の比)の特性変化を詳細に解析しました。研究チームは、乾燥状態と水飽和状態のコンクリート試料を様々な温度で加熱し、その後の超音波特性を比較。その結果、乾燥状態のコンクリートでは、加熱温度の上昇に伴い超音波速度とVp/Vs比がともに減少する傾向が確認されました。しかし、水で飽和させたコンクリートでは、同じく加熱温度の上昇に伴い、超音波速度の温度依存性が乾燥試料とは異なる挙動を示し、Vp/Vs比が顕著に増加するという興味深い現象が明らかになりました。さらに、本研究では、有効媒質理論と亀裂モデルに基づいて、ひび割れが生じたコンクリートの超音波速度を理論的に導出し、これが実験結果と高い精度で一致することを示しました。一方で、飽和状態のコンクリートにおける実験結果と理論予測の間に見られた差異は、高温によって誘発されるセメントの二次水和プロセスがコンクリートの基盤構造に影響を与える可能性を示唆しており、今後の検討課題として指摘されています。
この一連の研究は、超音波速度とVp/Vs比を用いることで、コンクリートの熱損傷を非破壊で検知するための画期的な枠組みを提示するものです。特に、コンクリート中の水分含有量の変化が熱損傷の評価に及ぼす影響を正確に特定できるようになった点は、極めて重要な進展と言えます。これにより、火災後の構造物評価はもちろん、熱的な負荷を受けたインフラ構造物の健全性診断において、内部の微細なひび割れや構造変化をより高精度で検出できるようになります。将来的には、本技術は、コンクリート構造物のより的確なメンテナンス計画の策定や、長期的な安全性確保に大きく貢献することが期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)