AIニュース|2025-11-24 Cement の新着まとめ

Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Cement」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。


Temperature correction protocol for in-situ monitoring of concrete during the curing and post-curing periods: application to low carbon concrete

コンクリート構造物の長期的な性能、特にその強度と耐久性は、打設後の初期養生期間における温度条件に大きく依存します。建設現場では、気象条件の変動によりコンクリートが晒される温度も常に変化するため、その性能を正確に評価し、最適な養生を行うことは長年の課題でした。近年、地球温暖化対策の一環として、セメント使用量を削減し、高炉スラグ微粉末や石灰石粉末などの産業副産物を代替材料として用いた「低炭素コンクリート」の利用が世界的に推進されています。これらの新しいコンクリート材料は、従来のポルトランドセメントコンクリートとは異なる水和特性や微細構造を持つため、その品質管理や長期性能評価には、より高度で信頼性の高いモニタリング技術が喫緊に求められています。

このような背景のもと、本研究は、コンクリートの電気特性測定を、現場の変動する温度条件下および一定の実験室温度条件下での性能を評価する新たな手法として提案しています。特に画期的な新規性は、これまでの先行研究が成熟コンクリートに焦点を当てていたのに対し、打設直後の「標準養生期間中」から「養生期間後」に至るまで、広範囲にわたる期間でコンクリートの性能評価を可能にする「新しい温度補正プロトコル」を導入した点にあります。このプロトコルは、温度変化による測定値のばらつきを克服し、現場でのリアルタイムかつ非破壊的なモニタリングを現実のものとします。研究では、ポルトランドセメントに加え、高炉スラグ微粉末や石灰石粉末を組み込んだ二成分および三成分結合材からなる多様な低炭素コンクリート配合を対象に、この温度補正プロトコルの有効性が検証されました。

本研究は、正規化抵抗率というパラメータを用いて、様々な低炭素コンクリートにおける水和反応と微細構造の発達に温度が及ぼす影響を詳細に分析しました。その結果、電気伝導の活性化エネルギーは結合材の種類に固有であり、打設後最初の5ヶ月間にわたって時間とともに増加し、13~31 kJ/molの範囲で変動することが明らかになりました。特に、高いセメント置換率の低炭素コンクリートは、活性化エネルギーが徐々に増加し、最終的には通常のポルトランドセメントコンクリートよりも高い値を示すことが判明しました。これは、セメント置換率の高いコンクリートが、より分断され、複雑で曲がりくねった細孔ネットワークを形成することを示唆しています。しかし、この種のコンクリートが20℃以下の低温に晒されると、細孔構造の発達が著しく遅くなるという重要な知見も得られました。この発見は、低炭素コンクリートの現場適用において、低温環境下での適切な養生期間や条件設定がいかに重要であるかを浮き彫りにします。電気特性測定は、技術的に簡便でありながら、コンクリートの品質をリアルタイムで監視する現場モニタリングに極めて適していることが示されており、本研究で開発された温度補正プロトコルは、低炭素コンクリートを含むあらゆるコンクリートの品質管理、特に初期強度発現や長期耐久性予測において、建設業界に大きな進歩をもたらすものと期待されます。

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Restoration of hydraulic properties in recycled cement pastes via thermal treatment

現代社会が持続可能性を追求する中で、資源消費と環境負荷が大きい建設業界における循環型経済への移行は喫緊の課題である。特にセメント製造は、高温焼成に伴う多大なエネルギー消費とCO2排出が問題視されている。このため、使用済みコンクリートを単なる破砕材としてではなく、その主成分である水和セメントペーストを新たなバインダーとして再生する革新的なリサイクル技術が、持続可能な建設産業実現の鍵として期待される。本研究は、この課題に対し、熱処理によって水和セメントペーストの水硬性を回復させる可能性を探るものである。

本研究では、28日間水和させたセメントペーストを粉砕後、400℃から800℃の範囲で熱処理を施し、その相変態と水和メカニズムを分析した。29Si核磁気共鳴(NMR)分光法やX線回折(XRD)とリートベルト解析の結果、特に600℃での熱処理が、水和セメントの主要成分であるC-S-H相の完全な分解を伴い、セメントの重要な水硬性鉱物であるベライト(C2S)が効率的に形成されたことが確認された。これにより、再生セメントペーストが水硬性を獲得することが実証された。興味深いことに、再生バインダーは通常のポルトランドセメントよりも多くの水を必要とするが、これは熱処理で生成される遊離石灰の高い反応性に起因すると考えられる。しかし、28日間の再水和後には形成されたベライトの大部分が消費され、熱処理リサイクルセメントペーストが水硬性バインダーとして機能することが確認された。

これらの画期的な知見は、熱処理されたリサイクルセメントペーストが、低温で生成されるベライト系バインダーとして機能する大きな可能性を秘めていることを示唆する。従来のセメントクリンカー製造は高温焼成で多量のCO2を排出するが、本手法は比較的低い温度での熱処理によりセメントの主要水硬性鉱物を再生できるため、大幅なエネルギー消費とCO2排出量の削減に貢献し得る。これは、従来のクリンカー生産に代わる有望な低炭素代替品として、建設業界の温室効果ガス排出量削減に寄与し、資源の有効活用を促進する。本技術のさらなる発展は、持続可能なコンクリートリサイクルシステムの確立と循環型経済社会の実現に大きく貢献するだろう。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)


Properties and microstructure of carbonated concrete brick through CO2 mineralization with cement kiln exhaust gas

地球温暖化対策が喫緊の課題となる中、セメント産業は主要なCO2排出源の一つとして、その排出量削減とCO2有効活用への貢献が強く求められている。排出されたCO2を鉱物として固定化し、建築材料へと転用する炭酸化技術は、環境負荷低減と資源循環を両立させる有望なアプローチとして近年注目を集めているが、その実用化には、安定した品質と経済性を両立させる技術確立が不可欠であった。従来のコンクリート養生プロセスがCO2を排出する一方で、CO2を吸収・固定化する新たな製造プロセスの開発が待望されていた。

本研究は、この課題に対し、セメント工場から排出されるキルン排ガスを直接利用し、コンクリートレンガの促進CO2養生を行う革新的な手法を提示した。特筆すべきは、単なる実験室レベルの検証に留まらず、商業生産ラインから得られた2年間にわたる長期データに基づき、この炭酸化コンクリートレンガが日本の国家標準の要件を十分に満たすことを実証した点である。さらに、適切な条件で保管することで圧縮強度が持続的に向上するという、材料の長期安定性に関する重要な知見も得られた。従来のオートクレーブ養生レンガとの詳細な比較分析を通じて、炭酸化によって形成される独特な組成や微細構造が科学的に裏付けられ、これが材料の優れた性能に寄与していることが明らかにされた。本成果は、未利用であったセメントキルン排ガスという課題を資源へと転換する具体的な手法を提示し、持続可能な建築材料生産の可能性を大きく広げるものである。

本技術がもたらす意義は多岐にわたる。環境面では、セメントキルン排ガス中のCO2を直接活用し、建築材料に固定化することで、セメント産業全体のCO2排出量削減に大きく貢献し、カーボンニュートラルな社会の実現に向けた具体的な一歩となり得る。エコ効率の評価においても、本技術は環境負荷の低減だけでなく、安定した性能と経済的利益を両立させることが示されており、持続可能な生産システムとしての優位性が確認された。商業生産ラインでの実証データや国家標準への適合は、この炭酸化コンクリートレンガが今後の建築市場において、高い競争力を持つ環境配慮型製品として普及する強い後押しとなるだろう。炭酸化メカニズムの深い理解は、コンクリートレンガに留まらず、他の多様なコンクリート製品へのCO2利用技術の応用と発展を加速させ、建材産業全体のグリーンイノベーションを牽引する重要な基盤となることが期待される。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)