Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Geopolymer」に関連する新着論文 1 本の要点をまとめました。
Thermal resistance of diatomite-based one-part geopolymer: Microstructural and post-exposure durability analysis
近年、地球環境への配慮から、建設分野における持続可能な材料の開発が喫緊の課題となっています。中でも、セメントに代わる低炭素な結合材としてジオポリマーが注目を集めていますが、その実用化にはいくつかの課題がありました。例えば、高炉スラグ微粉末(GGBS)をベースとするワンプラート(一液性)ジオポリマーモルタルは、常温で硬化が可能で現場施工性に優れる反面、高温環境下での強度が著しく低下するという耐熱性の問題が、その応用範囲を限定していました。一方、フライアッシュをベースとするジオポリマーは優れた耐火性を示すものの、効果的な硬化には高温養生が不可欠であり、実際の建設現場で適用するには不向きという課題がつきまとっていました。このように、これまでのジオポリマーは「常温硬化性・現場施工性」と「優れた耐熱性」のいずれか一方に強みを持つトレードオフの関係にあり、両者を兼ね備えた材料の開発が強く求められていました。
このような背景のもと、本研究は、この課題に対し、熱的に安定な非晶質シリカ質材料である珪藻土をGGBSと長石をベースとするワンプラートジオポリマーシステムに組み込むという新たなアプローチを採りました。研究チームは、GGBS、長石、そして異なる割合(0%から15%)の珪藻土を組み合わせた三元バインダーを開発し、その性能を普通ポルトランドセメント(OPC)と比較評価しました。特に注目すべきは、珪藻土10%を配合したジオポリマーモルタルが、1000℃での加熱後においても11.8 MPaという高い圧縮強度を保持した点です。これは、800℃を超えると完全に破壊したOPCモルタルと比較して、格段に優れた耐熱性を示しています。この配合は、酸や硫酸塩に対しても優れた耐久性を持つことが明らかになりました。さらに、珪藻土15%配合のモルタルは、OPC比で密度が19%減少し、熱伝導率が68.5%低下するなど、軽量かつ高断熱な特性を発揮しました。微細構造分析からは、加熱後も熱的に安定なアルミノケイ酸塩相が維持され、Si-O-T結合が保持されるとともに、より緻密なマトリックス形成が確認され、性能向上のメカニズムが裏付けられました。珪藻土の添加による作業性のわずかな低下はあったものの、全ての配合は許容範囲内の流動性を示しました。
これらの成果は、珪藻土の添加が常温硬化が可能なジオポリマーの耐熱性、耐久性、そして断熱特性を飛躍的に向上させることを実証しました。本研究で開発された珪藻土ベースのワンプラートジオポリマーは、これまでのジオポリマーが抱えていた高温環境下での適用制限という課題を克服し、持続可能かつ耐火性が求められる多様な建設用途において、極めて実用的で有望な代替材料となり得ます。将来的には、耐火壁、断熱材、軽量構造材料など、幅広い分野での応用が期待され、建設分野における環境負荷の低減と安全性の向上に大きく貢献する可能性を秘めていると言えるでしょう。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)