AIニュース|2025-12-12 Cement の新着まとめ

Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Cement」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。


Self-sealing and -healing performance and environmental adaptability of concrete cracks using superabsorbent polymers

コンクリート構造物は、その強靭さにもかかわらず、環境ストレスに起因するひび割れが避けられない課題です。こうしたひび割れは構造物の耐久性や供用期間を著しく損ねるため、補修が不可欠ですが、その手間とコストは膨大です。近年、この問題を解決する有望なアプローチとして、超吸水性ポリマー(SAPs)をコンクリートに添加し、ひび割れが発生した際に自己封止・自己修復を促す技術が注目を集めています。SAPsはひび割れに侵入した水分を吸収して膨潤し、ひび割れを物理的に閉塞させることで、水分や有害物質の侵入を防ぎ、コンクリートの劣化を抑制することが期待されています。しかし、特に凍結融解や乾湿の繰り返しといった厳しい環境条件下でのSAPsの長期的な性能や安定性については、これまで十分に解明されていませんでした。このような背景のもと、本研究は、2種類の異なるSAPsを適用したコンクリートの自己封止性能と耐久性を、過酷な環境サイクル下で詳細に評価し、その実用化に向けた重要な知見を得ることを目的としました。

今回の研究では、2種類の超吸水性ポリマー(SAP1とSAP2)を添加したコンクリートを対象に、凍結融解サイクルおよび乾湿サイクルといった厳しい環境暴露実験を実施し、ひび割れ幅、透水性、そして材料損失を多角的にモニタリングしました。その結果、SAPsのタイプによって、封止性能と耐久性に顕著な違いがあることが明らかになりました。具体的には、SAP1は初期段階において高い膨潤能力とゲル形成能により優れたひび割れ封止性能を示しましたが、繰り返しサイクルを経ると透水性が著しく増加し、材料の損失も大きいという課題が浮上しました。一方、SAP2は初期の封止性能ではSAP1に及ばないものの、長期的な安定性に優れることが判明しました。詳細なSEM-EDS分析からは、この性能差の要因が示唆されました。SAP1は水和物が多く非晶質のゲルを形成するのに対し、SAP2はより緻密で炭酸塩を多く含む層を形成していることが観察されました。これらの違いは、熱力学的な観点から、SAP1が形成するゲルが準安定で破壊されやすい一方で、SAP2はより安定した結晶相を形成し、コンクリート界面との強固な結合を維持している可能性を示唆しています。さらに本研究では、ひび割れの透水性と材料損失を統合した新しい性能指標として、「質量封止効率(Mass Sealing Efficiency: E m )」を提案し、SAPsを用いた自己封止コンクリートの総合的な性能評価を可能にしました。

これらの発見は、超吸水性ポリマーを用いた自己修復コンクリートの設計において、非常に重要なトレードオフが存在することを示しています。すなわち、初期の「封止強度」を高める特性と、長期的な「環境耐久性」を維持する特性の間には、選択的な関係があるということです。この知見は、SAPsを基盤とする自己修復コンクリートシステムの開発において、目指す用途や構造物が置かれる具体的な環境条件に応じて、最適なSAPsの種類や配合を tailored design(個別設計)するための実践的な指針を提供します。今後、今回の研究で明らかになったメカニズムに基づいて、特定の環境に特化した高性能なSAPsを選定・開発することで、コンクリート構造物の持続可能性と安全性の向上に大きく貢献することが期待されます。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)


Understanding the role of magneto-rheological control in modifying the mechanical characteristics of cement pastes

現代の建設分野では、材料の高性能化と精密な施工管理が喫緊の課題となっています。特に、セメント系材料の硬化前の流動性、すなわちレオロジー特性を外部から自在に制御できる技術は、施工性の向上や複雑な構造物の製造において大きな可能性を秘めています。磁気レオロジー(MR)流体は、磁場を印加することでそのレオロジー特性を可逆的に変化させることが知られていますが、この原理をセメント材料に応用した場合、磁場が硬化後の機械的特性や内部の微細構造にどのような影響を及ぼすのか、その詳細なメカニズムはこれまで十分に解明されていませんでした。こうした背景から、本研究は、磁性粒子を配合したセメントペーストにおいて、磁場曝露が機械的性能および微細構造変化に及ぼす影響とそのメカニズムを詳細に解明することを目的としました。

本研究では、異なる水セメント比や養生齢のセメントペーストを、微細および粗粒のFe₃O₄粒子を用いて作製し、様々な強度の磁場に曝露させるという多角的なアプローチを採用しました。その後、方向性圧縮強度試験によって機械的異方性を評価するとともに、X線回折(XRD)、水銀圧入法(MIP)、走査型電子顕微鏡(SEM)、エネルギー分散型X線分光法(EDX)といった高度な分析手法を駆使して、内部の微細構造変化を詳細に調べました。その結果、セメントペーストの磁気レオロジー応答が磁場強度と粒子サイズに強く依存することが明らかになりました。特に、粒径18 μmのFe₃O₄粒子は、比較的弱い磁場強度(25~60 mT)であっても、セメントペーストのレオロジーを大きく変調させる効果があることを示しました。さらに、磁性粒子の方向性を持った配向が硬化後の機械的異方性を引き起こすことも突き止めました。この異方性は、初期の養生齢においてより強い磁場強度(70~115 mT)を印加した場合に最も顕著に現れ、28日齢まで持続するのは、水セメント比0.45で粒子含有量10%という特定の条件下に限られることも判明しました。加えて、磁場勾配はFe₃O₄粒子を高磁束領域へ移動させ、その結果として水和生成物や細孔構造に空間的な不均一性を生じさせるという、硬化組織への直接的な影響も明らかにされました。

これらの詳細な知見は、磁場によるセメント材料のレオロジー制御が、粒子サイズ、磁場強度、水セメント比、粒子含有量といった複数の要因に複雑に依存することを示唆しています。本研究の成果は、フレッシュ状態での効果的な磁気レオロジー制御を実現しつつ、硬化後の機械的特性への悪影響を最小限に抑えるための具体的な指針を提供するものです。特に、先進的な建設実務において、磁性粒子の配合比率や磁場の印加方法を最適化する上で極めて価値の高い情報を提供し、材料設計の新たな可能性を拓きます。将来的には、精密な形状制御が求められる3Dプリンティング技術を用いた建設や、特定の方向に高い強度を持つ異方性コンクリートの開発など、多様な応用分野への貢献が期待され、より高性能で持続可能な建設材料の開発に弾みがつくことが見込まれます。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)


Biochar-amended high-strength engineered cementitious composites

現代の建設業界は、セメント生産に伴う莫大な二酸化炭素(CO2)排出という環境課題に直面しており、持続可能な代替材料の開発が喫緊の課題です。高強度・高延性を持つエンジニアードセメンタイト複合材料(ECC)は、その高性能ゆえに次世代建設材料として期待される一方で、さらなる環境性能の向上が求められていました。このような背景から、農業残渣などから生成され、炭素固定能力を持つバイオ炭に着目し、セメント代替材としてECCに適用することで、性能維持と環境負荷低減の両立を目指す研究が進められています。

本研究は、バイオ炭を高強度ECCに5%から30%の割合でセメント代替として添加し、その機械的性能、耐久性、微細構造、環境影響を包括的に評価しました。その結果、バイオ炭の添加はECCの内部養生を促進し、28日圧縮強度を95.4 MPaから99.6 MPaという高水準で維持できることが判明。引張性能も向上し、特に20重量%のバイオ炭添加で8.58 MPaに達する優れた引張強度を示しました。微細構造分析では、結合材のポゾラン反応促進と、5%から10%のバイオ炭添加による繊維とマトリックス間の界面遷移帯(ITZ)の緻密化、および結合強化が確認されています。耐久性面では、全収縮量を最大24%削減する効果がある一方で、高濃度添加では吸水性やガス透過性の増加が見られました。ライフサイクルアセスメント(LCA)では、炭素排出量を最大80%削減し、バイオ炭1kgあたり2.0kgのCO2換算量を隔離する強力な炭素固定能力が裏付けられました。ただし、高濃度添加でのひずみ容量低下や、バイオ炭の供給源が排出量に影響を与える可能性も指摘されています。

これらの研究成果は、バイオ炭を適用した高強度ECCが、持続可能な建設ソリューションとして極めて有望であることを明確に示しています。高性能を維持しつつ、セメント製造に伴うCO2排出量を大幅に削減し、大気中のCO2を材料中に固定するという多角的な環境メリットを両立できるからです。本技術の発展は、将来の低炭素社会における建設業界の変革を促し、地球環境の保全に貢献する画期的な一歩となるでしょう。今後は、高添加量における耐久性などの課題克服と、多様なバイオ炭供給源の評価を進めることで、その実用化がさらに加速されることが期待されます。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)