Obsidian と Zotero を連携して文献管理・引用作業を自動化しようとすると、初手で「No citation found」というエラーに悩まされがちです。多くの場合、プラグインそのものの不具合ではなく、ポート番号やデータベースのパス、citekey 関連の設定が噛み合っていないだけです。本記事では、とくに「Zotero Integration+Pandoc Reference List」を使うケースを想定して、つまずきやすいポイントとチェックすべき設定項目を整理します。
主なポイント
- 「No citation found」は、プラグインが Zotero に接続できていないか、文献データベースを正しく参照できていないサインである
- ポート番号・データベース(Bib ファイル)・citekey の3点を順番に確認すると、ほとんどのケースは解決できる
- 「Show citekey suggestions」をオンにすることで、citekey 検索が安定し、引用候補が出やすくなる
- 研究用途で「Obsidian+Zoteroは当然」とされがちだが、初期設定のハードルが高く、最初につまずきやすい前提を理解しておくことが重要
- まずは最小限のプラグイン構成で動作確認し、安定してから応用的なテンプレートやスタイル切り替えに進むとトラブルが減る
文献管理・引用まわりでなぜつまずきやすいのか?
研究用途で Obsidian を調べると、「Obsidian+Zotero で文献管理するのが定番」といった情報がすぐに見つかります。ところが、初めて環境を構築する人の多くは、次のような点でつまずきます。
- Zotero との接続方法(ポートや API の仕組み)がイメージしづらい
- どのプラグインが何をしているのか(Zotero Integration と Pandoc Reference List の役割分担)が分かりにくい
- データベースのパスや Bib ファイルの場所など、設定項目が多く、どこをどう合わせればよいか判断しづらい
この結果、プラグイン自体はインストールできているのに、引用挿入の段階で「No citation found」と表示され、「何も出てこない=壊れている」と感じてしまいます。本当は、設定が噛み合っていないだけというケースがほとんどです。
Zotero 連携プラグインで「No citation found」が出るのはなぜ?
ここでは、とくに Obsidian の「Zotero Integration」プラグインと「Pandoc Reference List」を併用している状況を想定して、エラーの原因になりやすいポイントを整理します。
Zotero との接続(ポート)ができていない
もっとも基本的な問題は、「プラグインがそもそも Zotero にたどり着けていない」という状態です。
- Zotero 側が起動していない
- Zotero のローカルサーバー(ポート)が無効になっている
- プラグイン側のポート番号が Zotero 側の設定と一致していない
といった理由で、プラグインからの問い合わせが Zotero に届かず、結果として「No citation found」と表示されます。
チェックの目安
- Zotero を起動した状態で Obsidian を開いているか
- Zotero の設定で「外部ツールからの接続」を許可する項目がオンになっているか
- Zotero Integration の設定画面にある「Port」欄が、Zotero 側のポート番号と一致しているか
ポート番号を正しく合わせるだけで引用候補が出始めるケースは少なくありません。
データベース / Bib ファイルのパス設定が間違っている
接続自体はできていても、「どのファイルから文献情報を読むか」というデータベースの指定が間違っていると、プラグインは空のデータベースを見にいくことになります。
よくあるのは次のようなパターンです。
- Bib ファイルをエクスポートしたが、その保存先をプラグイン側に正しく指定していない
- Zotero のデータフォルダを移動したのに、プラグイン設定が古いパスのままになっている
- 別の PC からフォルダ構成だけコピーし、パスが環境に合っていない
チェックの目安
- Pandoc Reference List の設定にある「Bib ファイルのパス」が、実際に存在するファイルを指しているか
- その Bib ファイルをテキストエディタで開くと、期待する文献がきちんと書き出されているか
パスを修正しただけで「No citation found」が消えることも多いです。
citekey の生成・検索設定が合っていない
Zotero 連携では、多くの場合 Better BibTeX などで生成した「citekey(引用キー)」を手がかりに文献を検索します。ここが噛み合っていないと、文献は存在しているのにプラグインが見つけられません。
- Zotero 側で citekey を発行していない
- citekey のフォーマットを途中で変えたため、古いノートと新しいノートで書き方がバラバラになっている
- プラグインの「Show citekey suggestions」がオフになっており、入力中の候補が一切出てこない
チェックの目安
- Zotero の各文献に citekey が付与されているか(Better BibTeX などのプラグイン設定も確認)
- Obsidian の引用挿入コマンド実行時に、
@を打つと候補が表示されるか - 「Show citekey suggestions」など、citekey のサジェスト機能がオンになっているか
「Show citekey suggestions」をオンにしたことで、一気に引用候補が出るようになったという報告もあります。
スタイルや出力フォーマットの選択ミス
Zotero Integration と Pandoc Reference List は、最終的に Markdown あるいは Pandoc 用の引用形式を出力します。このとき、スタイルや出力形式の設定が想定とズレていると、出力はされているのに「期待した表示になっていない」ため、エラーと勘違いしてしまう場合があります。
- Pandoc 用の引用スタイル(CSL ファイル)を指定していない
- Markdown 用のテンプレートと Pandoc 用のテンプレートを混在させている
まずは「エラーが出ているのか」「出力されているけれど形式が違うだけなのか」を切り分けることが重要です。
具体的なエラー事例と設定パターン
ここでは、冒頭のケースを例に、どこを確認すると良いかを整理します。
事例:Zotero Integration+Pandoc Reference List を入れても「No citation found」
症状
- Obsidian に「Zotero Integration」と「Pandoc Reference List」をインストール
- コマンドパレットやショートカットから引用挿入を試みると、画面下部に
No citation foundと表示される - プラグインを入れ直しても状況が変わらない
解決につながった設定
- Zotero Integration の設定で、ポート番号を Zotero 側の設定と一致させる
- Zotero Integration / Pandoc Reference List の設定で「Show citekey suggestions」をオンにする
このような報告から分かるのは、「プラグインを再インストールしても、設定が間違っていればエラーは解消しない」ということです。特に、ポート番号と citekey 関連の設定は、デフォルトのままでは環境に合わない場合があります。
設定項目が多さが心理的な障壁になる
Zotero Integration・Pandoc Reference List の設定画面には、多くのチェックボックスや入力欄が並びます。これが次のような心理的ハードルになります。
- どの項目が必須で、どれが上級者向けオプションなのか分からない
- 一度触ると壊しそうで怖く、結局デフォルトのまま使ってしまう
- エラーが出たとき、どの項目を疑えばいいのか見当がつかない
その結果、プラグインを「入れ直す」方向に解決策を求めてしまいます。しかし、Zotero と Obsidian の連携トラブルは、設定のすり合わせで解消できることがほとんどです。
Obsidian+Zotero を安定運用するための基本ステップは?
トラブルを減らすには、最初のセットアップを「シンプルなチェックリスト」として進めるのがおすすめです。
ステップ1:Zotero 側の準備
- Zotero を起動し、最新の状態にアップデートする
- 文献に citekey(引用キー)が付くよう、必要であれば Better BibTeX などのプラグインを導入する
- Bib ファイルや CSL スタイルなど、Obsidian 側が参照するファイルを決めておく
ステップ2:Obsidian で Zotero 連携プラグインを導入
- Obsidian のコミュニティプラグインから「Zotero Integration」「Pandoc Reference List」をインストール
- それぞれの設定画面を開き、以下の最低限の項目だけをまず合わせる
- Zotero への接続ポート番号
- Bib ファイルやデータベースのパス
- citekey のサジェスト機能(Show citekey suggestions など)
ステップ3:テスト用ノートで動作確認する
設定直後に、いきなり本番ノートで使い始めるのではなく、「テスト用ノート」を用意して動作を確認します。
@を打つと citekey の候補が出るか- 適当な文献を選び、Markdown に引用形式が挿入されるか
- そのノートを保存し、再度開き直してもエラーが出ていないか
このテストが通れば、基本的な接続は問題ないと判断できます。
トラブルを減らすための注意点・ベストプラクティス
プラグインを増やしすぎない
Zotero 連携まわりのプラグインは多数ありますが、最初から複数を入れすぎると、どのプラグインがどの設定を使っているのか分からなくなります。まずは
- Zotero Integration
- Pandoc Reference List
など、役割がはっきりした最小構成で動作確認し、安定してから追加のプラグインを検討すると安全です。
設定をメモしておく
ポート番号や Bib ファイルのパス、citekey のフォーマットなどは、後から見直せるようにメモしておくと便利です。Obsidian の別ノートに「環境設定メモ」を作り、プラグイン名ごとに設定値を書いておくと、PC を乗り換えたときや、何かトラブルが起こったときに復旧しやすくなります。
調子が良い状態を「スナップショット」として保存する
一度安定動作する状態が作れたら、その時点の設定やバージョン情報を記録しておきましょう。
- Zotero のバージョン
- Obsidian のバージョン
- 各プラグインのバージョンと主要な設定値
これらを残しておくことで、アップデート後に問題が起きても、どこまで戻せばよいか判断しやすくなります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 「No citation found」が出たとき、まず何から確認すべきですか?
最初に確認すべきなのは、Zotero が起動しているかどうかと、Zotero Integration のポート番号です。Zotero を起動したうえで、プラグイン側のポート設定が Zotero 側と一致しているか確認します。そのうえで、Bib ファイルのパスと citekey サジェスト設定(Show citekey suggestions など)を順にチェックすると、原因を絞り込みやすくなります。
Q2. プラグインを入れ直せば「No citation found」は解決しますか?
多くの場合、インストールし直すだけでは解決しません。問題の本質は、Zotero との接続やパスの設定が噛み合っていない点にあるためです。プラグインの再インストールは最終手段と考え、まずは設定値を一つずつ確認することをおすすめします。
Q3. citekey を意識せずに使うことはできますか?
理論上は、タイトルや著者名で文献を検索できるプラグインもありますが、安定した運用を考えると citekey を軸にした運用がおすすめです。Obsidian のノートから一意に文献を指定できるため、将来の環境移行やテンプレート変更にも強くなります。
Q4. Windows と Mac で設定は変わりますか?
ポート番号などの基本的な考え方は同じですが、Bib ファイルや Zotero データフォルダのパスは OS によって変わります。エラーが出た場合は、「パスの書き方が OS に合っているか」を必ず確認してください。
Q5. 一度設定した citekey のフォーマットを変えても大丈夫ですか?
途中でフォーマットを大きく変更すると、既存ノートに書かれた citekey と Zotero 側のキーが一致しなくなります。どうしてもフォーマットを変えたい場合は、既存ノートの citekey を置換する手順もセットで検討する必要があります。特に大型プロジェクトでは、フォーマット変更は慎重に行ってください。
まとめ:まずは「接続・パス・citekey」の3点を見直す
Obsidian と Zotero を組み合わせると、文献管理・引用作業は飛躍的に効率化しますが、その一方で初期設定のハードルが高く、「No citation found」に代表されるつまづきが発生しがちです。多くのケースでは、プラグイン自体が壊れているわけではなく、ポート番号・データベースのパス・citekey 設定のいずれかが噛み合っていないだけです。
今すぐできる次の一歩
- Zotero を起動した状態で、Zotero Integration のポート設定と Zotero 側の設定が一致しているかを確認する
- Pandoc Reference List の Bib ファイルパスが正しく、実際に文献が書き出されているかチェックする
- citekey が各文献に付与されているか、Obsidian で「Show citekey suggestions」などのサジェスト機能がオンになっているか試す
この3点を順番に見直すだけでも、「No citation found」問題は大きく前進します。そのうえで、自分の研究スタイルに合ったテンプレートやスタイル選択に進んでいけば、Obsidian+Zotero は非常に強力な文献管理基盤になってくれます。
