カーボンニュートラルセメントの開発動向

1. はじめに

2050年のネットゼロ(実質排出ゼロ)に向け、セメント産業は製造プロセスそのものの変革を迫られています。セメントは、石灰石の脱炭酸に由来するプロセス起源のCO2と、高温焼成に必要な熱(燃料)由来のCO2が同時に発生するため、単純な省エネや燃料転換だけでは限界がある分野です。

一方で近年は、クリンカーそのものの低炭素化、セメント代替結合材(補助結合材・新結合材)の活用、CCUSの統合、さらに電化・水素利用など、多面的なアプローチが「同時に」進み始めています。本記事では、カーボンニュートラルセメントを議論するうえで外せない評価の考え方を整理した上で、主要技術の現在地と、実用化に向けた論点を過不足なくまとめます。

なお、本稿で扱う削減率や固定量などの数値は、配合、電源構成、輸送距離、設備仕様、評価境界(LCAのスコープ)によって大きく変動します。SEO上も読者の誤解を招きやすいポイントのため、代表値を「断定」せず、条件付きで理解できるように記述しています。

2. カーボンニュートラルセメントの定義と評価の考え方

2.1 カーボンニュートラルの定義(ネットゼロの組み立て)

カーボンニュートラルセメントは、ライフサイクル全体の温室効果ガス排出を実質ゼロに近づけたセメント(またはコンクリート用結合材)を指します。現実的には、次の順番で組み立てるのが基本です。

第一に、製造段階の排出をできる限り削減(省エネ、代替燃料、混合材、低炭素クリンカー、電化など)します。第二に、どうしても残る排出に対して、CCUS等で回収・貯留・利用を組み合わせます。第三に、なお残る排出がある場合に限り、オフセットや除去クレジット等を使う、という順序です。

特に「オフセットで中和してカーボンニュートラル」といった言い回しは誤解を生みやすく、規制・ガイドラインの強化も進んでいます。公開コンテンツとしては、削減・回収・オフセットの内訳や前提条件を明確にしておく方が、検索評価(信頼性)とブランド双方の観点で安全です。

2.2 評価基準(LCA・スコープの設定)

ライフサイクルアセスメント(LCA)による評価
比較の土台を揃えるためには、LCAの境界条件が重要です。セメント・コンクリートでは「ゆりかごから門まで(Cradle-to-Gate)」が一般的ですが、環境価値を説明する場合は「ゆりかごから墓場まで(Cradle-to-Grave)」も視野に入れる必要があります。

また、企業の排出管理の観点ではScope 1(直接排出:燃料燃焼・プロセス起源)、Scope 2(購入電力等)、Scope 3(原料調達・輸送・施工・解体等)までをどう扱うかで見え方が変わります。読者が最も混乱しやすいのは「どこまでを含めてゼロと言っているのか」なので、公開時は評価対象範囲を本文内で明示してください。

2.3 国際的なフレーム(GCCA・SBTiの位置づけ)

世界のセメント産業では、GCCAのロードマップ等を参照しながら、代替原料・代替燃料、混合材、CCUS、電化の組み合わせで2050年を見据えた道筋を描くケースが一般的です。一方でSBTiは「削減目標の科学的整合性」を確認する枠組みであり、個社が掲げるベース年や指標(総量・原単位)もばらつきます。

そのため本記事では、特定の「一つの数値目標」を断定するのではなく、各社が共通して取り組むべき技術領域(後述)と、実装上のボトルネックに焦点を当てます。

3. 主要技術の全体像(何が効いて、何が難しいか)

3.1 低炭素クリンカー(焼成温度・鉱物設計の見直し)

従来の普通ポルトランドセメントは、エーライト(C3S)を多く含むクリンカーを得るために高温焼成が必要でした。これに対し、ビーライト(C2S)比率を高める設計や、鉱物相の制御によって焼成条件を見直す研究開発が進んでいます。一般に、焼成温度の低減は熱起源の排出削減に直結しますが、同時に強度発現(特に初期強度)や施工性に影響しやすい点が難所です。

ビーライト系は、長期強度や耐久性の面でメリットが期待される一方、用途によっては初期強度の要求が高く、設計・配合・施工条件を含めた最適化が不可欠になります。したがって「低温=万能」ではなく、適用領域の切り分け(プレキャスト、マスコン、長寿命インフラ等)が実用化の鍵になります。

また、カルシウムサルホアルミネート(CSA)系は、クリンカー組成と原料選択の工夫で石灰石起源の排出を抑える余地があるとされます。ただし、原料調達(アルミナ源等)、規格化、耐久性の蓄積データなど、普及のための前提条件が多い領域でもあります。国内でも研究・実証の取り組みはあるものの、削減効果は配合と置換率に依存するため、公開時は「どの条件でどの程度」を示す形が望ましいでしょう。

3.2 セメント代替結合材(混合材・新結合材)

現実解として普及が早いのは、混合材(補助結合材)を増やしてクリンカー比率を下げるアプローチです。高炉スラグやフライアッシュなどを活用できる場合、クリンカー起源の排出を直接圧縮できます。ただし供給量や品質の安定性に制約があり、電源構成の変化(石炭火力の縮小等)によって長期的な入手性が課題になる可能性があります。

ジオポリマーは、セメントを使わずに副産物系材料をアルカリ活性化して結合材とする選択肢で、条件次第では大幅な排出削減が見込まれます。一方で、原料のばらつき、アルカリ溶液の取り扱い、規格・設計法、長期耐久性データなど、社会実装に必要な“周辺整備”の比重が大きい点が特徴です。したがって、当面は適用しやすい用途(特定のプレキャスト製品、舗装・二次製品等)から広げる戦略が現実的です。

また、CO2を材料側に取り込み、硬化過程で炭酸塩として固定化する炭酸化硬化技術も注目されています。ここは表現に注意が必要で、「CO2を食べる」「カーボンネガティブ」といった言い切りは、評価境界を示さないと誤解を招きます。実務的には、製品カテゴリ(プレキャスト等)と養生条件が揃うと導入しやすく、固定化量も配合・設備で大きく変動します。公開時は「固定化量は条件で変わる」ことを明示し、可能なら一次情報(メーカー・施工者の公表資料)にリンクするのが望ましいです。

マグネシウム系結合材については、硬化時にCO2を取り込みやすい設計が研究されている一方、過去に話題になった特定企業(例:Novacem)はすでに事業体として継続していないとされ、現在の商用化の主体・計画は整理が必要です。本稿では、個社の断定を避け、「研究が継続する技術領域」として位置づけます。

3.3 CCUS/CCUと製造プロセスの転換(電化・水素)

プロセス起源排出(脱炭酸)は、燃料転換だけでは消せないため、ネットゼロの議論ではCCUSが中核オプションになります。欧州を中心に、回収技術の実証・商用化の取り組みが進み、セメント産業の“最後の難所”をどう越えるかが争点になっています。

加えて、回収したCO2を炭酸カルシウム等の形で材料化するCCUの検討も進んでいます。ただし、CO2の利用先が恒常的に需要を持つか、固定が長期的に担保されるか、製品の環境価値がどう評価されるか(第三者検証を含む)など、技術以外の論点も大きい領域です。SEOの観点では「技術として可能」だけでなく、「事業として成立させる条件」を書けると、読者満足度が上がりやすいパートです。

熱源側では、電化(電気炉・プラズマ等)や水素・アンモニア等の燃料転換が議論されています。ただしセメントの焼成は高温・大出力・連続運転が前提で、エネルギーコスト、設備投資、供給インフラ、運転安定性の四点が同時に問われます。したがって、短期的には「代替燃料の拡大+省エネの最大化」、中期以降に「電化・水素の本格導入」といった段階論で整理する方が、実態に即した説明になります。

4. 実用化を左右する論点(コスト・規格・調達)

技術が揃っても、普及を決めるのは市場側の条件です。とくに建設分野は、材料が規格・設計法・責任分界(瑕疵リスク)に強く縛られるため、性能が同等でも採用までに時間がかかります。

コスト競争力
脱炭素型の結合材は、設備投資やエネルギーコスト、回収・処理コストが上乗せされやすく、従来品より高コストになりがちです。普及初期は「公共調達」「グリーン調達」「環境価値の見える化(第三者検証)」が需要創出のトリガーになります。ここを明確に書くと、読者(発注者・設計者・施工者)の検索意図に合致しやすくなります。

規格・基準
JISや各種仕様書、建築・土木の設計標準との整合は避けて通れません。混合材の拡大、新結合材の導入、CO2養生製品の扱いなどは、材料の性能だけでなく「どう評価し、どう保証するか」の仕組みづくりが必要です。技術開発と並行して、第三者評価・認証の整備が進むかどうかが普及速度を左右します。

サプライチェーン
混合材や副産物系材料は、量・品質・地域偏在の問題がつきまといます。電源構成や産業構造の変化で供給条件が変わる可能性もあるため、単一材料に依存しない複線化(複数の代替材、複数の調達先)を前提に語る方が、実務に役立つ情報になります。

5. 2050年に向けた現実的ロードマップ(整理)

ロードマップは、技術の成熟度(TRL)に合わせて段階を区切るのが実務的です。目安としては次の整理が分かりやすいでしょう。

~2030年(普及の土台づくり)
混合材の高度化、省エネの最大化、代替燃料の拡大が主戦場です。同時に、CCUSは商用化に近い案件から先行し、輸送・貯留インフラと一体で議論されます。

2030~2040年(大規模実装の分岐点)
低炭素クリンカーや新結合材の適用領域が広がり、電化・水素利用も「実証から一部商用」へ進む時期です。ここで重要なのは、材料性能の実証だけでなく、規格・調達・保証の仕組みが整うことです。

2040~2050年(ネットゼロの完成形へ)
残余排出の扱い(回収・貯留・除去)を含めて、産業システムとしてのネットゼロが問われます。材料単体ではなく、エネルギー・回収・物流・調達を束ねた統合戦略が競争力になります。

6. まとめ

カーボンニュートラルセメントは、単一技術で達成できるテーマではなく、「クリンカー比率の低減」「新結合材の適用」「CCUSの統合」「電化・水素など熱源の転換」を、地域のインフラ条件と規格・調達の現実に合わせて積み上げる取り組みです。

SEOの観点で重要なのは、技術名の羅列ではなく、(1)評価境界(LCA)を揃えて語ること、(2)実証と商用を混同しないこと、(3)数値は前提条件付きで示すこと、(4)規格・調達・保証の論点まで踏み込むことです。本稿はその前提に沿って整理しました。あとは、企業名や数値を追加したい場合に限り、必ず一次情報(公式発表・公的報告書・プロジェクト公式)へのリンクを添えることで、公開後も安定して評価される記事になります。

参考文献

[1] Global Cement and Concrete Association (GCCA). Concrete Future: Roadmap to Net Zero. https://gccassociation.org/concretefuture/

[2] Scrivener, K.L., John, V.M., Gartner, E.M. (2018). Eco-efficient cements: Potential economically viable solutions for a low-CO2 cement-based materials industry. Cement and Concrete Research, 114, 2-26.

[3] Gartner, E., Hirao, H. (2015). A review of alternative approaches to the reduction of CO2 emissions associated with the manufacture of the binder phase in concrete. Cement and Concrete Research, 78, 126-142.

[4] International Energy Agency (IEA). Direct Air Capture: A key technology for net zero(関連資料).

[5] LEILAC(Low Emissions Intensity Lime And Cement)プロジェクト公式・報告資料(関連資料).

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